バーンアウト症候群(燃えつき症候群・バーンアウト・シンドローム)とは、医師や看護師、教師といった専門職を襲う症状で、1970年代からアメリカで注目され出し、日本でも1980年頃から問題になってきました。
当ブログでも過去に燃え尽き症候群に要注意のページで概要を説明しましたが、このページではさらに詳しい内容について紹介したいと思います。
目次
- バーンアウト症候群(燃えつき症候群)の症状
- バーンアウト症候群(燃えつき症候群)の発症原因
- バーンアウト症候群(燃えつき症候群)に陥りやすいタイプは?
- バーンアウト症候群(燃えつき症候群)のチェックリスト
- バーンアウト症候群(燃えつき症候群)の対処と予防方法について
- 参考リンク(外部サイト)
バーンアウト症候群(燃えつき症候群)の症状
症状としては、感情と体の両面に現れることが多く、感情面では「不安」や「いらいら」、「気分の落ち込み」といった症状が現れます。また、自尊心が低下し、仕事への自信や職業的な誇りが失われていくような状態に陥ってしまいます。
燃え尽き症候群(もえつきしょうこうぐん、英: Burnout Syndrome)は、一定の生き方や関心に対して献身的に努力した人が期待した報酬が得られなかった結果感じる徒労感または欲求不満。慢性的で絶え間ないストレスが持続すると、意欲を無くし、社会的に機能しなくなってしまう[要出典]症状。一種の心因性(反応性)うつ病とも説明される。 極度のストレスがかかる職種や、一定の期間に過度の緊張とストレスの下に置かれた場合に発生する。会社の倒産と残務整理、リストラ、家族の不慮の死と過労などに多いと言われている。
wikipedia 燃え尽き症候群より
今まで熱心に仕事などに打ち込んでいた人が、突如として無気力状態に陥ってしまう等の症状が現れますが、これも燃え尽き症候群に見られる代表的な症状の一種です。
症状が悪化してくると、それまで「はつらつ」と行なっていた仕事を機械的にこなすようになり、アルコールや薬物に対する依存状態、不眠(睡眠障害)、頻繁な風邪(免疫力の低下)、上気道感染や息切れ、胃腸障害、頭痛や腰の痛み、高血圧といった様々な症状が現れます。そして、さらに症状が悪化してしまうと、最終的にはうつ状態になってしまうこともあるのです。
以下はバーンアウト症候群(燃えつき症候群)に見られる代表的な症状となります。先ほど紹介した感情・身体両面の症状と合わせて、以下の症状が自分に起こっていないかを確認してみてください。
- 消耗し尽くした感じで、疲労や意欲の減退が起こる。
- ストレス性の身体症状(頭痛や肩こり、不眠障害や胃腸障害など)が現れる。
- 自分に自信が持てなくなる。
- すべきことを成し遂げたという気分が実感できなくなる(個人的達成感の減退)。
- 周囲を思いやる余裕がなくなる。
- 人間関係が苦痛になる。
- 人との関わりを拒否する。
- 物事や人に無関心になる(人を物のように扱ったり、事務作業に集中するようになる)。
- 自分を正当化する。
- 些細なことに拘って相手を責めたりする。
- 感情のバランスを失い不安定になる。
一説によれば、教師や看護師では30~40%もの高い率で燃え尽き状態にあるという報告もあるほどで、自分がその状態に陥ってることに気付かずに、無理をして働き続けている人も少なくありません。
バーンアウト症候群(燃えつき症候群)の発症原因
就職して間もない頃になりやすく、経験を積み重ねていく程に症状はよくなってきますが、経験年数が30年以上の管理職クラスになると、再び症状が現れてくるという特徴があります。
個人的な発症要因としては、繊細で献身的、理想を目指す性格であったり、家庭での持続的ストレスが原因となることもあります。
職場要因としては、個人の能力を超えた仕事、クライアントの要求が厳しい仕事、相応な評価や達成感の欠如、不十分なトレーニングなどが挙げられます。
社会的な要因としては、専門職への期待が強い一方で、権威が低下していること、クライアントの権利意識の向上、社会的サポートの低下などが挙げられます。
以下は燃え尽き症候群の要因として考えられる背景の一例です。
- 理想と現実とのギャップが原因と考えられるもの。これは、1~3年目の新人がこのギャップに直面しやすいとされているが、10年以上のキャリアをもつ管理者や新人教育担当者の燃え尽きも多く見られる。
- 自分の内面と他人の外面を比べ、自分を非難する。
- 「DOING」(仕事をすること)と「BEING」(生活すること)が一緒になってしまうこと。本来であれば、「DOING」は「BEING」の中に含まれる位置づけになる。
- ありのままの自分を受け入れずに、自分のニーズを満たそうとしない。
- 「報われ感」がない。毎日が厳しい環境であり、そして同じ事の繰り返し。しかし、その事に対する評価が無い状態。
- 使命感や義務感、責任感が強すぎる一方で、トレーニングや経験が少ない。
- 手を抜けない状態が長期間続く。
バーンアウト症候群(燃えつき症候群)の発症プロセス
燃え尽き症候群は、一般的に以下のプロセスを辿るとされています。また。燃え尽きによる精神面や肉体面の崩壊の危機から逃れようと、アルコールや薬物などの逃避行動が見られるケースも多くあるといわれています。
- 態度の変化:怒りっぽくなり、不平不満が増える。人や物に対して疑い深くなったり、寡黙でひきこもりがちになる。
- 逃げの行動:クライアントとの対等な関係を避け威厳的に接するようになる。忙しそうな振りをしたり、仕事を休みがちになり、転職を希望するようになる。
- ストレス性の身体症状
- 燃え尽きの否認:自分の価値を実証しなくてはという強迫観念から、スケジュールをさらに過密にしたり、困難なケースを担当する。仕事をスーパーマン的にこなすことで、存在感をアピールしようとする。
- 崩壊:1~4の悪循環から、不安・怒り・恐怖感などが強まる。適切なサポートが得られないと、抑うつ感と攻撃性が高まり、正常な人間関係が保てなくなる。
バーンアウト症候群(燃えつき症候群)に陥りやすいタイプは?
発症原因の項目で、燃え尽き症候群に陥りやすいタイプ(個人的要因)について触れましたが、この項目ではさらに踏み込んだ解説を行っていきます。
この疾患は、教師や看護師等の「対人援助職」に就いている人をはじめ、仕事一筋のビジネスマンや子育て一筋の専業主婦等も陥りやすいといわれています。
ビジネスマンにしても専業主婦にしても、共通しているのが「一つのことに打ち込んで、高い目標を掲げている」ことです。その目標が達成された、或いは達成されなかった際に燃え尽きてしまい、バーンアウト症候群を発症させてしまうのです。
頑固で一途な性格の人も要注意
何かにひたすら打ち込むことが出来る人の性格は、頑固であったり一途であったり、或いは周囲の思惑を無視して突っ走る傾向にあります。そういった性格である人は、特に注意が必要といえるでしょう。具体的には、以下のような性格の人です。
- やる気満々で理想の高い人
- 猛烈社員型のビジネスマンやキャリア・ウーマン
- 高い目標を持つ受験生
また、社会的な対人関係に於いても、燃え尽き症候群が発症する可能性があると指摘されています。具体的には以下のような特徴の人です。
- 対人関係で要領の悪い人
- 世渡りが下手な人
燃え尽き症候群は完璧主義者の人に多い
バーンアウト症候群(燃えつき症候群)に陥りやすい人の典型的な性格として、「完璧主義」が挙げられます。完璧主義な性格の人は、仕事が順調に進んでいるときは、高い成果を挙げる事ができます。しかし、ほんの小さな躓きをきっかけに、一気に気力を失ってしまう可能性があり、その結果「燃え尽きて」しまうのです。
自分の性格が完璧主義な部分がある・・・と感じている人は、多少の失敗や妥協なら問題ないというくらいの気持ちで仕事に取り組み、「全てを完全に仕上げる」という考え方を、少し和らげるようにしてみましょう。
そして、自分が達成してきたこと、できる事に焦点を当てて、自己を肯定的に評価するといった方法で、上手にストレスを発散していく必要があります。
バーンアウト症候群(燃えつき症候群)のチェックリスト
過去12 ヶ月のあなたの生活全体(仕事、社会との関わり、家族、休暇を含む) を見直して、この期間に起こった「変化」の度数を調べていきます。質問に答え るとき、下の表の度数を使います。自分に対し正直に答えてください。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|
変化なし又はほとんど変化なし | 少しの変化があった | 変化があった | 結構な変化があった | 非常に大きな変化があった |
質問
- 以前より疲れやすい、疲労が溜まっている、一日の終わりにはくたくたになる。
- 今の仕事に興味がなくなっている。
- 仕事全体に対してやる気がない。
- 物事に飽きっぽく、特に何もしないで何時間も過ごす。
- 自分や他人に対してより悲観的、批判的、けちをつけるようになった。
- 約束や締切日などを忘れることがあり、それについて気にしない。
- より多くの時間を、友達や家族、職場の同僚と離れて一人で過ごしますか?
- 普段と比べて短気を起こしたり、敵意を持ったり、攻撃的になったりすることが増えましたか?
- ユーモアのセンスが際立って減少したと思いますか?
- 以前より病気になりやすくなりましたか。(風邪や体の痛みを含む)
- 通常より頭が痛くなりやすいですか?
- 胃腸の調子が悪いですか?胃痛、慢性の下痢、大腸炎、など。
- 朝、とても疲れを感じたり、消耗した感じで起きることが多いですか?
- 以前は周りにいても気にならなかった人々を故意にさけていますか?
- 性欲の減少がみられますか?
- 他の人をまるで人格がない物質のように扱ったり、無神経に扱ったりしがちですか?
- 仕事上で、有意義な結果を何も出していないと感じたり、何かを変える力がないと感じていますか?
- プライベートな時間において、有意義なことを何もしていないと感じたり、自発的に活動することがなくなったりしていると感じますか?
- 日々、仕事や人付き合い、将来のことや過去にあったことを考えたり心配して過ごす時間が長いですか?
- 限界を感じていたり、参っていたり、気力が衰えていますか?
解説
まず、まったく正確で絶対的に確実な一覧表は存在しないということを覚えておいてください。この燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)チェックリストによるあなたの点数は、(燃え尽き症候群に関する)あなたの体験の指標にすぎません。今のあなたの人生は収拾がついていないという程度に受け取ってください。
もし点数が高ければ、医師や心理療法士、カウンセラー、個人的なアドバイザーなどに相談して助けを得るようにしてください。今の状態から開放される最初の一歩は、「自分には問題がない」と否定をすることなしに、自分のそのままの状態を認めることです。
20~30点
燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)の心配はありません。人生や仕事に対して無頓着かもしれません。
31~45点
まじめによく働いている人にある平均的な数値です。時にはリラックスしましょう。
46~60点
燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)の比較的軽い症状が出ているようです。ライフスタイルを注意深く見直すことで改善が見られるでしょう。
61~75点
燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)の症状が出始めています。ライフスタイルの改善が必要です。
76~90点
あなたは燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)です。症状を緩和するための援助を受けてください。また、現在のライフスタイルを再評価し、改善すべきところはしていきましょう。
90点以上
燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)のひどい症状です。緊急に症状を緩和する必要があります。現在の状態では、健全な身体と精神を保つことが困難なはずです。
出典元:http://enrichmentjournal.ag.org
バーンアウト症候群(燃えつき症候群)の対処と予防方法について
バーンアウト症候群の対策としては、新人教育プログラムを充実させ、職場の環境や人間関係の見直し、個人生活の充実などが考えられます。また、医療的な対応が求められる場合もあります。
しかし、何よりも体を休めるための十分な休養が必要と考えられており、疲労が慢性化してしまった「慢性疲労」の状態になってしまえば、それだけ燃え尽き症候群に陥る危険性が高まってしまいます。
心の対処法
この病に陥りやすい人のタイプとして、「頑固」であったり「一途」「完璧主義」な性格の人が挙げられますが、これらの性格の人に共通しているのが、「自分に厳しすぎる」ことです。時には自分に優しくして、自分が行ってきた仕事の結果をしっかりと認めることが必要です。要するに「自分に厳しくしすぎない」ということです。
また、一度仕事の現場から離れてみて、自分を見直す時間を設けることも効果的です。思い切って長期の有給休暇をとり、仕事を休んで仕事の現場から離れてみることも、燃え尽き症候群に対する有効な対処法となります。
そして、無理に気力を振り絞ることなく、自然に気力が沸いてきた時に、また仕事に復帰すればよいのです。しかし、長期で仕事を休むことが出来ない職場もありますので、そういった場合は無理や我慢をせず、速やかに心療内科を受診するようにしてください。
身体的な対処法
身体的な対処法としては、まずは生活のリズムや内容(生活習慣)を見直すことです。心だけでなく、体への負担も大きなストレスの元。体への負担が減るだけでも、心にゆとりが生まれ、その結果が燃え尽き症候群の対処法となるわけです。
体への負担を軽減する具体的な方法としては、以下のものがあります。
この様に、バーンアウト症候群(燃えつき症候群)の対処法は、心にも体にも充電期間を作ってあげることが肝要なのです。そして、体の調子を整えて、仕事に復帰してからは、高すぎる目標を設定せず、体と心の力を抜いて、自然体で過ごすことを心がけるようにしてください。
日本人は我慢することを美徳とする部分があり、病気を重病化させてしまう傾向にあるといわれています。長期の休みが取れなかったり、仕事が忙しくてどうしても休みをとることが出来ないといった場合であれば、速やかに心療内科を受診して、医師の診察を受けるようにして下さい。
予防方法について
この項目の冒頭にも書きましたが、何よりも体と心をしっかりと休めることが、燃え尽き症候群を予防する有効な方法となります。
仕事を忘れて趣味に没頭し、気分転換を図ったり、気軽に会話が出来る友人と飲みにいき、少しハメを外してみるといった時間も大切です。また、適度な運動によって汗を流すことも、燃え尽き症候群を予防する有効な手段となることでしょう。
仕事の面においても、何もかも完全に仕上げるのではなく、多少の妥協は仕方が無いと考えるようにしてください。例えば、80%の仕事振りでも相手が満足するのであれば、その仕事に対して120%を求める必要はありません。
そして、失敗したことのみに焦点を当てるのではなく、自分が今までに達成してきたこと、成功してきたことに対して焦点を当て、自分を肯定的に評価するようにして、ストレスをうまく処理できるように努めて下さい。
- 燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)の状態は、個人の性格と環境との相互作用で生じると考えられる。
- 正しい知識を身につけ、「いつもの自分と違う感じ」という、体や心のSOSサインをキャッチし、速やかに対処することが大切。
- 燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)は徐々に進行するプロセスであり、対応を誤れば職業生活のみならず人生を破壊するほどの威力をもちかねない。家族関係の破綻・ひきこもり・飲酒や薬物問題・うつ・自殺企図などの背景ともなりうるものであり、決して軽視しないこと。
また、最近の研究によって、継続的な運動を行なうことで、燃え尽き症候群やうつ病等の精神疾患を予防・改善できるということが分かってきました。適度にかく汗は、気持ちが良いものです。運動を習慣化するのは中々難しいのですが、自分の体のためにも、なるべく運動を行う機械を設けるようにしたいものです。