心の働きに作用する薬は、一般的に「向精神薬」、あるいは「精神安定薬」といわれています。種類としては、主に以下の薬があります。
- 抗精神病薬
- 抗うつ薬
- 気分調整薬
- 抗不安薬
- 精神刺激薬
統合失調症では、抗精神病薬を主薬として、抗うつ薬や気分調整薬、抗不安薬を補助的に使用して治療にあたります。
抗精神病薬の効果・効能
抗精神病薬には二つの働きがあり、一つは文字通り精神病に関する症状を抑える事、もう一つは病気の再発を予防することです。
一つ目の効果では、幻覚や妄想を軽減し、思考にまとまりを出し、興奮や昏迷といった行動面の異常を抑える役目を果たします。また、感情面の安定化が期待できます。
そして、二つ目の効果では、回復期での病気の再発を予防します。この薬の作用は、薬を服用していない人に比べて再発率を大幅に抑えるということが証明されています。
抗精神病薬の種類
抗精神病薬の種類には、従来型の抗精神病薬と新規の抗精神病薬の2種類があります。
前者はこれまで長きに渡って利用されてきた薬で、長期効果がよくわかっており、医師も使い慣れているという特徴があります。しかし、副作用のために、長期間の使用に耐えがたい面もあります。そこで、最近では後者の新規の抗精神病薬が利用される場面が増えてきました。
すでに欧米では、新規の抗精神病薬が主体となっていますが、日本でも4種類の薬が市販され、今後もいくつかの薬が市場に出てくると予想されています。
服用量と服薬期間
急性期に症状にあわせて薬の量を少しずつ増やしていきます。その後に症状の改善がみられた時点で、薬の増量をやめます。そして、その量を数週間から数ヶ月間継続した後、以後は徐々に量を減らしていきます。
薬の量を減らし続けた後、あるタイミングで維持量を決定し、以降は再発防止のために服用を継続していきます。
以上の服用の量と期間の動きは病状の変化にあわせているわけですが、維持量には個人差が大きいので、医師が症状を見ながら個人に合わせて決定していくことが一般的です。
服薬期間については、専門家の間でも見解が分かれています。アメリカ精神医学会から発表されたガイドラインによると、
- 初回の場合は回復1年後に服薬中止が可能
- 再発の場合は期間を限定せず薬を続ける
という考えが示されています。中止する場合は、自覚や再発時への心構えなどが必要となります。
副作用と対策について
副作用には軽微なものと、重症となるものが確認されています。軽い場合であれば、次回の診察まで待ってもよいのですが、重篤な場合は早急に医師に相談する必要があります。
副作用として軽いものには、以下のものがあります。
- 眠気
- かすみ目
- 便秘
- 口が渇く
- 頻脈
- 立ちくらみ
- 手の震え等
重症なものとしては以下のものが確認されています。
- 皮膚の発疹
- 痙攣(けいれん)
- 静止不能状態
- 筋肉のこわばり
- 口周りの不随意運動
- 月経の変化
- 高熱 等
新規の抗精神病薬では、以上で紹介したような副作用は少ないとされていますが、体重の増加、血糖の上昇、脂質異常症(高脂血症)などが新たな副作用として見られる場合もあるので、注意が必要です。特に、糖尿病にかかっている場合は利用できないという薬もあります。
副作用の対策としては、薬の服用を中止したり、服用量の減量、他の薬への変更が一般的となっていますが、場合によっては出てきた風作用を抑えるための薬が処方される場合もあります。
手の指の震えや静止不能状態、筋肉のこわばりに対しては抗パーキンソン薬を併用するのがその一例です。
抗精神病薬はかなり安全性の高い薬であり、誤って大量に飲んでしまっても致死量に達することはまずありません。また、長期間の適用も可能とされています。
したがって、再発防止などの効果をもたらすために、長期服用することができるという有利さがあります。しかし、実際には長期の服用によって副作用が現れ、その副作用が原因で途中で服用をやめてしまうというケースも少なくありません。
副作用が出た場合は、ただちに医師に相談を行い、服用量や薬の種類について対策を行い、服用を継続していくことが肝要とされています。
薬物療法によって陽性症状が改善された後も、陰性症状は改善されていないケースは多いのですが、その場合に行われるのが心理社会的療法となります。