人間の性格は様々で、一人として同じ人間はいません。個性は人ぞれぞれで個人差があるのです。しかし、多くの人を見ていると、性格(人格)の個人差はある程度の幅の中に納まっています。
しかし、さらに多くの人を見ていくと、平均的なところから大きくずれている人が必ずいます。そのような性格の中には、社会生活や対人関係でマイナスに作用し、その結果、本人が自分の性格について悩んでしまったり、または周囲がその性格に振り回されて悩んだりします。
これが人格障害にあたり。性格障害や性格異常、精神病質といった様々な名称が用いられています。また、これらの障害は、一般的には青年期頃からはじまり、成人になるにつれて徐々に明瞭になってきます。
人格障害の種類について
人格障害と一口にいっても、その種類は様々です。以下では、一般的に見られる人格障害の病態について解説しています。尚、これらは国際分類に準じています。
妄想性人格障害
妄想とは、現実にないことをあたかも起こったことのように考え、他人から指摘されても考えを変えない思考のことで、妄想状態においては、その考えに基づく言動があり、周囲との摩擦が生じることが多くなります。
妄想は統合失調症(精神分裂病)などの精神疾患に良くみられる症状ですが、そのような疾患がなく、性格に根ざす場合が人格障害にあたります。
疑り深く被害的になりやすい、嫉妬しやすくて恨みを抱き続ける。他人から拒まれることに非常に敏感である、また、自尊心が強くて自分の話ばかりして、自分の権利を執拗に主張するといった特徴があります。
また、次の7つの基準のうち、4つ以上があてはまると妄想性人格障害の可能性が高まります。
- 十分な根拠もないのに、他人が自分を利用する、危害を加える、または騙すといった疑いをもつ。
- 友人などの誠実さや信頼を不当に疑うい、それに心を奪われている。
- 情報を漏らすと自分に不利に使われるという恐れのために、他人に秘密を打ち明けようとしない。
- 悪意のない言葉や出来事の中に、自分をけなす、または脅す意味が隠されていると思い込む。
- 侮辱されたり、傷つけられたり、または軽蔑されたと感じると、恨みを抱き続けけて相手を決して許さない。
- 自分の評判などに敏感に反応しする。そして、攻撃されていると感じ取り、すぐに怒ったり逆襲したりする。
- 何の根拠もないのに、配偶者や恋人の貞節に対して疑いを持つ。
分裂病質性人格障害
他人との親しい人間関係を望まず、空想や内省(自分の考えや行動などを深くかえりみること)に没頭して社会的に孤立しています。感情の表現が乏しく、また周囲からの批判・賞賛などにも関心を払わなくなります。
超然(物事にこだわらず平然としていること)としていたり、社会的な規範や習慣に著しく鈍感であったりします。
非社会性人格障害
別名「反社会性人格障害」ともいわれます。欲求不満に陥りやすく、暴力的になる傾向があります。また、責任感が乏しく、罪悪感も薄くて外罰的であるという特徴があります。
また、社会と衝突した場合は自己弁護の傾向が強いことも特徴的です。
外罰的とは?
自分の欲求不満の原因を外部に求め、他人を非難したり、外部の物・状況に対して攻撃反応を示したりする傾向。
情動不安定性人格障害
結果を考えずに行動してしまう傾向(これを衝動性と呼びます)と、それを止めようとした相手と衝突する傾向や突発的な怒りや暴力、常に賞賛を要求する傾向、そして不安定で気まぐれな気分などを特徴とするのがこの人格障害の衝動型です。
そして、上記の特徴に加えて以下の特徴が見られ場合は「境界型(境界型人格障害とも)」とも呼ばれます。
- 混乱した自己像
- 対人関係における激しい不安定性
- 自暴自棄
- 自傷行為
- 慢性的空虚感
演技性人格障害
感情の表現がオーバー(大げさ)で芝居がかっていたり、注目の的になるような行動をとったり、周囲の言動に影響され易い、身体的魅力に過度に拘るといった特長があります。
強迫性人格障害
几帳面で完全癖、頑固で徹底性であるとともに、周りに対する疑いや警戒の感情が強くでます。また、細部やものの順序に強いにこだわりをもち、自己流のやり方に他人も巻き込むといった特徴があります。
不安定性(回避性)人格障害
自分に自信がなく、人からどう思われるかを過度に気にして常に緊張状態となります。また、批判的な言動や自分の行いに対する非難を恐れ、行動範囲を極度に制限するといった特徴が現れます。
依存性人格障害
物事に対して自分ひとりでは意思決定ができず、依存している人の言うとおりに行動します。そして、ひとりで過ごしていることが苦痛に感じ、自律を求められると「見捨てられた」と思い込んでしまいます。
人格障害の治療
人格障害の中には、神経症やうつ病のような症状を出す場合も確認されています。そういった症状が確認される場合は、患者自身が治療を求めることも多く、精神療法や薬物療法が施行されます。また、境界型人格障害では精神分析療法が用いられています。
一方、自ら治療を求めようとしない患者も多く、その場合は周囲が困っているというケースもかなり多いと考えられており、これは医療の守備範囲を超えた問題といえるでしょう。