その他の脳器質性精神障害

この記事では、認知症疾患以外の脳の病気で精神症状が発生しやすい疾患を取り上げています。この記事内で紹介する病気以外でも、認知症の症状というものは出てきます。しかし、認知症の疾患と違い、多くの病気では症状が治癒する可能性があることから、病気の性質としては全く違うものと解釈されています。

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脳腫瘍

脳腫瘍には頭蓋骨内に原発するものと、転移によるものがあります。頭蓋内の圧力が亢進(こうしん)するために、頭痛や吐き気、嘔吐などの初期症状が現れたり、癲癇(てんかん)の発作が見られる場合もあります。

また、精神症状においては、腫瘍が発生する場所によって様々な症状が出てきます。

前頭葉に腫瘍が発生した場合であれば、意欲の減退や無関心、上機嫌といった精神症状が発生します。頭頂葉では失行(麻痺が確認されないのに正しい行いができない)、失認(感覚器の異常は認められないのに正しく認識できなくなる)などが出てきます。

治療は手術療法が一般的であり、脳腫瘍によって発生していた認知症の症状などの精神状態も改善が見込まめます。

肺炎や骨膜炎

脳実質に炎症が起こるのが脳炎で、脳脊髄膜に炎症が起こるものを髄膜炎と呼びます。その中でも、単純ヘルペス脳炎は高熱や頭痛、痙攣(けいれん)と共に幻覚などの精神症状を伴いやすく、一見すると精神病と見えることもあります。

治療は抗ウイルス薬が基本となりますが、何よりも早期発見が大切です。

クロイツフェルト・ヤコブ病

この病気は、プリオン(感染力の高いたんぱく質でBSE=牛海綿状脳症(狂牛病)の牛肉などにある)が原因で発症する病気です。とても稀な病気で、潜伏期間が長いという特徴があります。

認知症状や眼症状、神経症状が比較的急速に進行し、1~2年で死亡してしまうという恐ろしい病気です。今のところ、効果的な治療法が存在していない難病です。

エイズ脳症

エイズ脳症は「ヒト免疫不全ウイルス」が神経細胞を障害することによって生じるもので、認知症にみられる精神障害が見られます。

その他にも、精神症状が出やすいものに「結核性骨膜炎」や「日本脳炎」があります。さらに、原因を特定できないウイルス性の脳炎や、骨膜炎にもよく見られます。

パーキンソン病

振戦(安静時に指が震えて物をつまむような動き)や筋強剛(筋肉が硬くなる)、無動(自発的に動けなくなる)などの症状が見られる、神経性難病の一つです。

精神状態への影響としては、うつ病が合併しやすいといわれており、幻覚や妄想が出やすくなります。しかし、この症状は抗パーキンソン薬の副作用によるところもあります。また、他にも認知症の症状が出やすいことも特徴に挙げられます。

治療には様々な抗パーキンソン薬による薬物療法、そして外科的療法があり、最近になって遺伝子治療も行われるようになってきました。

頭部外傷後遺症

交通事故や転倒によって、頭部に強い力が加わることによって脳損傷を受けた場合に、認知症の症状が出る場合があります。また、傷を負った直後に意識が無くなったり、回復後にも逆行性健忘(俗にいう記憶喪失)が起こることもあります。

回復期においては、せん妄やうろう状態(意識がもうろうとしている中でまとまりの無い行動を行うこと)等が起こる場合もあります。

また、傷を負ってから1~2ヶ月頃になって、認知症の症状が出る場合があります。その場合は、慢性硬膜化血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)の可能性が疑われます。

この疾患は、脳を包んでいる一番外側の膜である「硬膜」と、次の膜である「くも膜」との間の静脈から徐々に出血することが原因です。この血腫を吸引等で除去することで、症状は回復します。

頭部外傷後遺症の後遺症には様々なものがあり、認知症を始め、人格の変化や癲癇(てんかん)、神経症性障害等が確認されています。また、後遺症は傷を負った部位や重症度によっても違いが出てきます。

そして、後遺症の回復にはリハビリテーション(リハビリ)を伴った薬物療法等が適応されます。特にリハビリテーションは重要で、毎日の繰り返しと本人の回復したいという努力(気持ち)によって、予後の回復具合が大きく変わってくることが特徴として挙げられます。

その他の疾患

その他の病気でも精神症状が発生することがあります。代表的なものとしては、「ハンチントン病」や「正常圧水頭症」、「癲癇(てんかん)」等があります。

ハンチントン病

この疾患は遺伝性の病気で、手足や体の踊るような不随意運動が特徴的です。精神的な影響としては、統合失調症に似たケースから、うつ病に似たケース、そして、認知症に似たケースなどが見られます。

根本的な治療法は確認されておらず、体の動きを少なくする薬物療法が行われます。

正常圧水頭症

正常圧水頭症は、頭部に追った外傷や骨膜炎後に生じるもので、歩行障害や尿失禁、認知症が主な症状となります。外科的な処置が有効とされており、治療によってこれらの症状が改善されることが多いといわれています。

癲癇(てんかん)

名前自体はよく耳にする疾患ではないでしょうか。てんかんでは、精神症状を併発する事が多く、認知症や性格の変化、幻覚や妄想といった症状が現れます。

治療は抗けいれん薬に加えて、抗精神病薬などによる薬物療法を中心として、精神療法、リハビリを併用して治療にあたります。

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