ものを見たり聞いたりして判断する働きを「知覚」といいますが、脳器質性精神障害やアルコール薬物関連障害、統合失調症などでみられる知覚面の症状には、大きく分けると次のようなものがあります。
幻視と錯視
実際にはないものが見える場合が「幻視(げんし)」で、実際のものが違って見えてしまうのが「錯視(さくし)」です。
幻視としてよく報告されているものは、死んだはずの肉親の姿が見えたといった類です。よく霊的なものと勘違いされることも多いのですが、その殆どは幻視によって説明ができるとされています。
一方、錯視は天井や壁のシミが人の顔に見えてしまう類のものです。錯視は周りの人が指摘することで本人も分かりますが、幻視はそのような修正ができません。
人には見えないものが見えているので、当然といえばそれまでですが、時にして幻視は周りの人に恐怖を与えることも少なくありません。
その他の知覚
先ほど紹介した幻視と錯視以外にも、人間には様々な知覚が存在します。
幻聴
実際に聞こえるはずの無い音が聞こえる症状です。人の声や物音、音楽、機械音等、その種類は様々です。
幻臭(げんしゅう)・幻嗅(げんきゅう)
実際に匂におうはずがないにおいを体験する症状です。一般的な幻臭の例としては、ガスのにおいや腐ったようなにおいがあります。
昔付き合っていた恋人が愛用していた香水が突然臭ったり、実際は臭いがしていないのに、自分の体から体臭が発生しているように感じるというものまで様々な種類があります。
幻味
実際には感じるはずの無い味を体験する場合を幻味(げんみ)といいます。「この食べ物にはとても高級な砂糖が入っている」と嘘の情報を与えられた後、その食べ物を味見した際に「とても美味しい甘みあがる」といったような偽の知覚を覚えることがあります。
幻触
実際に感じるはずのない触覚を体験する場合をいいます。
体感幻覚(セネストパチー)
異常な体の感覚を体験する場合を体感幻覚(たいかんげんかく)といいます。通常、感じるはずのない内臓の動きや間隔などを指し、有名な例としては「体の表面を虫が動いている」といったものがあります。