対人関係において重要な要素は、「相手への気遣い」と「配慮」であるといわれています。しかし、この2つの要素については不満も起こりがちです。なぜなら、人は他人の配慮や気遣いに「気づかない」ことが多いためです。
配慮や気遣いは目立ちにくい
「自分は他人に対して気を配っている。なのに、周りは私に対して気配りが出来ていない」と思う人は多いでしょう。さらには、「人に気遣いばかりして、気苦労が絶えない」という人も少なくありません。
このどちらにもいえることは、「自分に対して他人が行ってくれている気遣いや配慮」に気づいていないという点です。気遣いや配慮というものは、目に見えない(目立たない)部分も多く、それに気づくことが出来ないのは仕方のないことです。
例えば、海外から旅行に来た外国人の方々は、口を揃えて「日本のサービスや接客態度は素晴らしい」と言います。しかし、それに慣れてしまった私達は、「それが当たり前」と感じてしまい、サービスに関わっている方たちの細かい配慮に気づくことができません。
細かい配慮が行き届いているので、サービスを利用する私達もストレスを感じることがありません。また、その配慮に対して感謝の気持ちを持っている人が、いったいどれだけいるのでしょうか。
そして、当たり前のことが当たり前では無くなった時、私達はストレスを感じてしまいます。飲食店に入って、お冷を持ってこなかったり注文をとりに来てくれなければ、イライラしてしまう人も多いでしょう。テーブルが汚れたままなら、もうこのお店には来ないと強く思ってしまうことでしょう。
しかし、普通はそういったことはありえません。サービス業に関わっている人たちが当たり前のように業務をこなし、細かい配慮も自然と出来てしまう。これが、日本が世界に誇る「サービスの質の高さ」であるわけですが、私達はそれを「当たり前」と思い、「ありがたいことだ」といちいち感謝することもありません。
目の前に確かに見えている配慮が、まったく見えなくなってしまうのです。
配慮は気づかれない方がかっこいい
「自分の配慮が人に伝わらない」と感じているならば、ここまで説明してきたことを一度思い起こしてみてください。人は、誰もが自分なりに「他人に配慮している」と考えているものです。配慮していると考えているからこそ、相手に伝わらないことに苛立ち、不満をつのらせます。
しかし、そう考える自分自身も、他人から受けた配慮に気づいていないことが多いのです。この事実を知ることで、「配慮とはそういうものだ」と割り切りることができます。そうすれば、相手に伝わらないことに苛立ったりストレスを貯めこんでしまうこともなくなります。
配慮や気遣いは、相手に伝わらないからこそ美しくてかっこいい。また、他人に対して細かい配慮や気遣いができる気質は、私達日本人が代々受け継いできた素晴らしい文化です。例え他人に気付かれなくても、それだけわかっていれば十分なのです。