家族療法の言葉の中に、リフレーミングという言葉があります。ある枠組み(フレーム)で捉えられている物事を枠組みをはずして、違う枠組みで見ることを指します。同じ物事であっても、人によって見方や感じ方は異なりますし、ある角度で見たら長所になり、また短所にもなりうるということです。
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例えば、試験で残り時間が15分だった場合に、悲観的に考えた場合であれば「もう15分しかない」と感じますし、楽観的に考えた場合なら「まだ15分もある」と思います。これがリフレーミングという考え方です。
思考の枠組みによって考え方は変わってくる
井戸の中に棲んでいるカエルは、その井戸の中が世の中の全てです。同様に、私達が物を考える際も、元々ある「枠組み(フレーム)」があり、その中で思考を巡らせます。
以下は時にはマイナス思考も悪くないの記事の中で紹介した一文です。
例えば、目の前に高級なワインがグラス半分注がれている状態を見てい、「半分も入っている」と思うのか、「半分しか入っていない」と思うのかでは、意味合いがまったく違ってきます。「半分も入っている」と思えるならば幸福ですし、「半分しか入っていない」と考えてしまえば不幸な気持ちになってしまいます。
冒頭でも紹介したように、思考の枠組みによって考え方は180度変わってしまうわけです。もう一つ例を挙げるとすれば、戦前の教育を受けた人と戦後の教育を受けた人とでは、考え方に様々な相違点が生まれます。考え方が違えば、意見が対立することもあるでしょう。
しかし、それはどちらが良くてどちらが悪いというわけではなく、それぞれの枠組みの中で「これが正しい」とされることを主張しているにすぎないのです。
どの様なことであっても、斬新と思える考え(思考)とは、その枠組の外から来ている場合が多いものです。そういった考えを取り入れることで、これまで常識としていた枠組みが無くなり、考え方が飛躍的に進歩して視野も広くなることがあります。それは、枠組みが変化し、入れ替わったりすることで得られた結果なのです。
リフレーミングで枠組みを変化させる
心理カウンセラーの方々が目指しているものは、まさに「枠組みの変化」であるといえます。心に病を患ってしまうと、視野が狭くなり、自分が考える「枠組み」の中が全てになってしまいます。カウンセリングでは、その枠組を意図的に「変化」させ、枠組みを変化させようとします。これが「リフレーミング」です。
リフレーミングによって固定されていた枠組みを変化させ、患者の心に「認知の変化」を起こして治療にあたるわけですが、「私はとにかく臆病な性格だ」と自分を責め、一人で考えすぎてしまう人がいたとします。本来、持って生まれた性格というものは、簡単に変えることはできません。「臆病」な性格も、この人の性格の一部を表しているにすぎないのですが、そのことが縛りとなって心に悪影響を及ぼしてしまいます。
しかし、臆病とは良くいえば「慎重」な性格であるといえます。ネガティブな思考であっても、それは「慎重で思慮深いという考え方」でもあるわけです。この枠組を患者と共有し、患者自身のフレームを変化させることで、臆病さに膠着(こうちゃく)していた自分とは違った自分が見えてくるのです。
少しの変化が大きな結果を生む
上記の例では、考え方をほんのすこし変化させたにすぎません。しかし、患者さんにとってはこの様な些細なことであっても、大きく自分を変えていくためのきっかけとなることも少なくありません。
リフレーミングとは、「ほんの少しのきっかけ」を得るための考え方です。しかし、その「ほんの少し」を取り入れることで、日々の疲れも軽減させることができるかもしれません。
何をどうしても解決できなかった出来事が、他人の枠組みの中ではあっさりと解決することも実際に起こりえます。自分と他人が全く同じフレーム(枠組み)であることはまずありませんので、仕事に行き詰まった時は、周りにアドバイスを求めることも考慮してみましょう。本当にあっさりと、問題を解決することができるかもしれません。