自律神経は「交感神経」と「副交感神経」で構成されており、お互いに関連しあって生体内のバランスをとっています。しかし、このバランスが崩れてしまうと、身体両面に様々な影響を与えます。このバランスが崩れた状態が「自律神経失調症」です。
自律神経失調症となる原因は、体の病気の他、精神的なストレスによることが多いといわれています。
尚、この病名は正式なものではなく、とりあえずの診断名です。そして、原因がはっきりした後、正式な病名が用いられることになります。
治療の際は薬物療法が用いられ、治療によって体のバランスが回復することもあります。
自律神経の主な働き
自律神経は体の中で様々な役割を担っています。自律神経のバランスが崩れることで体のあちこちに影響が出てしまうのは、そのような重要な役割が自律神経にはあるためです。
- 精神の調整
- 神経の調整
- 内分泌の調整
- 免疫の調整
この4つの機能は、自律神経によって調整されています。いずれも「自分の意思でコントロールすることができない」ものであり、自律神経が乱れることによって、これらの調整バランスが乱れ、体に様々な影響を及ぼします。
自律神経失調症の主な症状
自律神経が乱れてバランスが崩れてしまうと、体の様々な部位に影響を与えてしまいます。以下では、各部位にどのような症状が現れるのかを箇条書きで表しています。
- 頭・・・頭痛、頭重感
- 耳・・・耳鳴り、耳の閉塞感
- 口・・・口の乾き、口中の痛み、味覚異常
- 目・・・疲れ目、なみだ目、目が開かない、目の乾き
- のど・・・のどの異物感、のどの圧迫感、のどのイガイガ感、のどがつまる
- 心臓・血管系・・・動悸、胸部圧迫感、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、血圧の変動
- 呼吸器・・・息苦しい、息がつまる、息ができない、酸欠感、息切れ
- 消化器・・・食道のつかえ、異物感、吐き気、腹部膨満感、下腹部の張り、腹鳴、胃の不快感、便秘、下痢、ガスがたまる
- 手・・・手のしびれ、手の痛み、手の冷え
- 足・・・足のしびれ、足のひえ、足の痛み、足がふらつく
- 皮膚・・・多汗、汗が出ない、冷や汗、皮膚の乾燥、皮膚のかゆみ
- 泌尿器・・・頻尿、尿が出にくい、残尿管
- 生殖器・・・インポテンツ、早漏、射精不能、生理不順、外陰部のかゆみ
- 筋肉・関節・・・肩こり、筋肉の痛み、関節のいたみ、関節のだるさ、力が入らない
- 全身症状・・・倦怠感、疲れやすい、めまい、微熱、フラフラする、ほてり、食欲がない、眠れない、すぐ目が覚める、起きるのがつらい
- 精神症状・・・不安になる、恐怖心におそわれる、イライラする、落ち込む、怒りっぽくなる、集中力がない、やる気がでない、ささいなことが気になる、記憶力や注意力が低下する、すぐ悲しくなる
自律神経失調症と関係の深い病気
症状が特定の部位に強くあらわれた場合であれば、別の病名がつけられることもあります。以下で紹介しているような病気は、自律神経失調症の一種、もしくはその仲間ともいえます。
- 循環器系・・・心臓神経症、不整脈、起立失調症候群、起立性調節障害
- 呼吸器系・・・過呼吸症候群、気管支ぜんそく
- 消化器系・・・過敏性大腸症候群、胆道ジスキネジー、神経症嘔吐症、反復性臍疝痛、神経性下痢
- 神経系・・・偏頭痛、緊張性頭痛
- 耳鼻科・・・めまい、メニエール病、乗り物酔い、咽喉頭異常感症
- 口腔外科・・・口内異常感症、舌痛症、顎関節症
- 皮膚科・・・円形脱毛症、発汗異常、慢性じんましん
- 泌尿器系・・・膀胱神経症、夜尿症、心因性排尿障害
- 婦人科・・・更年期障害
自律神経失調症の原因
自律神経のバランスが乱れてしまう原因は、個人差が大きく、人によって原因がまったく違うという場合が殆どです。また、不安やストレス、過労など、様々な要因が複雑に絡み合い、自律神経になんらかの影響を与える場合もあるのです。
以下では、自律神経が乱れてしまう要因としてよく見られるものを紹介しています。
生活のリズムの乱れ(生活習慣の乱れ)
夜更かしの頻度が多い、夜型人間である、夜間勤務(夜勤)が多い、子供の頃からの不規則な生活習慣を送っているなど、生活のリズムが乱れるような社会環境やライフスタイルは、自律神経のバランスを崩してしまいます。人体のリズムを無視した社会環境やライフスタイルを送っている人は要注意です。
過度なストレス
過度のストレスは人体にとって様々な影響を与えます。仕事に関する「社会的ストレス」や、人間関係のストレス、環境の変化にともなう精神的なストレスなど、日々の生活の中で受けるストレスは、自律神経のバランスを大きく乱してしまう可能性が高いと言えます。
ストレスに弱い体質
子供の頃からすぐに吐く、下痢になりやすい、自家中毒になったことがある、環境がかわると眠れないなど、生まれつき自律神経が過敏な人もいいます。また、思春期や更年期、身体が弱っているときは自律神経のバランスが乱れやすいといわれています。
ストレスに弱い性格
人からの頼みを断ることができない、感情の処理が苦手、気持ちの切り替えが下手、他人からの評価を気にしすぎるといった様に、ストレスに対する抵抗力が弱い人は、自律神経が乱れる傾向にあります。
他にも、人との信頼関係を結ぶのが苦手であったり、依存心が強い人も、ストレスに弱い傾向にあるようです。
>>ストレスに強い人の共通点は?ストレス耐性は個人差が大きい
環境の変化
現代の生活は適応能力が衰えやすく、社会環境の変化や人間関係、仕事などの環境の変化に対する不適応や過剰適応が増えています。その結果、自律神経のバランスが崩れやすい状態になっているといえます。
女性ホルモンの影響
女性は一生を通じてホルモンのリズムが変化しつづけます。この変化が自律神経の働きに影響を与え、更年期障害などの女性特有の影響が現れることが多くなっています。
自律神経失調症は4つのタイプに分けられる
自律神経失調症は大きくわけると、以下の4タイプに分けられます。
本態性型自律神経失調症
生まれつき自律神経の働きが乱れやすいタイプです。低血圧や虚弱体質、体力に自信がない人に多い傾向にあります。
神経症型自律神経失調症
心理的な影響がきっかけで発症するタイプです。自分の身体の不調に敏感な人がなりやすいとされ、身体的な不調が多くみられる場合は神経症ではなく、自律神経失調症と診断されます。
心身症型自律神経失調症
感情や疲労などの日常生活のストレスを無理に抑えることで発症するのがこのタイプです。自律神経失調症の約半数がこのタイプと言われおり、あらわれる症状やその重さが多岐に渡るという特徴があります。
抑うつ型自律神経失調症
ストレスの慢性的な蓄積などによるうつ反応が現れるのがこのタイプです。抑うつ気分が身体の症状に隠れて発見されないと「うつ」に対する適切な治療が行われないことになります。
自律神経失調症の治療
冒頭でも書きましたが、自律神経失調症は「とりあえず」の病名として付けられるもので、その後の検査によって正式な病名がつけられることになります。なので、治療についてはその病名に対応する治療法が適応されます。
用いられる主な治療方法
- 自律訓練法などによるセルフコントロール
- 薬物療法
- カウンセリングなどの心理療法
- 指圧やマッサージ、整体、鍼灸、ストレッチなどの理学療法
- 音楽療法やアロマテラピーなど五感に働きかける治療法
- 自己管理によるライフスタイルの見直し
- 生活のリズム
- 食事
- 睡眠
- 運動
- 心にゆとりを持つ
- ストレス耐性の強化
- 感情処理・・・など
さらに、症状やタイプなどにより、身体と心の両面に働きかける治療や生活環境の整備を行う必要がありますし、体質や性格・ライフスタイルの歪みにも注目し、それらを改善していくことも必要です。