睡眠には、だれでも望ましい「睡眠のスケジュール」があり、例えば夜の10時に寝て朝の6時に起きる、といったような具合です。このような睡眠のスケジュールに狂いが生じる病態のことを「睡眠覚醒スケジュール障害」と呼びます。
睡眠覚醒スケジュール障害を引き起こす症状として代表的なものは、以下の通りです。
睡眠相後退症候群
実際の睡眠が望ましい時間帯よりも遅い時間帯(後ろの方)にずれる場合をいいます。寝つきと起床が徐々に悪化し、やがて昼夜逆転の生活になってしまいます。
昼夜逆転の生活は、長期間の休み(学生で言えば夏休みなど)に入った際に見られる事が多いのですが、新学期が始まるとスケジュールは急速に元に戻ります。
しかし、スケジュールの調整が困難となるケースには、睡眠相後退症候群が隠れていることがあります。この病状は不登校の場合にも現れることがあります。
治療は入院などにより、徐々に起床時間を早める生活指導や高照度光照射療法、薬物療法(ビタミンB12の服用など)が一般的です。
睡眠相前進症候群
睡眠相後退症候群とは逆に、睡眠が前のほう(早い時間帯)にずれる場合をいいます。
この症状は高齢者に多く現れる傾向があります。尚、この場合は生活に支障が出るような問題は特にありませんし、「早寝早起き」は健康にも良いとされていますので、治療等の必要はありません。
非24時間リズム
私たちは1日24時間のリズムで生活していますが、本来は約25時間のリズムをもっています(概日リズムと呼ぶ)。
この概日リズムがなんらかの原因で外界の24時間リズムに対応できなり、徐々に睡眠感覚の時間のずれが生じてしまうのが非24時間リズムです。
全盲の人や脳障害のある人がこの症状を発症することが多く、その場合の治療は、睡眠相後退症候群と同様に起床時間を早める生活指導、高照度光照射療法や薬物療法を行います。
人為的なスケジュール障害
看護師や警備員などの交替制勤務者や、外国旅行をした場合にも睡眠覚醒リズムの調節がうまくいかない現象が起こります。それぞれ交代勤務睡眠障害・時間帯域変化(時差)症候群と呼ばれます。
交代勤務睡眠障害
交代勤務のために睡眠時間帯が頻繁に変化させられることによって、睡眠障害をはじめとする種々の精神・身体機能の障害がもたらされることがあり、交代勤務睡眠障害と呼んでいます。典型的には、夜間の勤務を終えて朝方から睡眠をとる際になかなか寝付けず、寝付いても何回も途中で目が覚めてしまうという症状が認められます。
引用元:交代勤務睡眠障害
時間帯域変化(時差)症候群
時間帯域変化(時差)症候群: この症候群は,時差が2時間より長い距離を短時間で移動することによって起こる。東行き(睡眠サイクルを前進)は西行き(睡眠を遅延)よりも重度の症状を引き起こす。
可能であれば,旅行前から目的地の睡眠-覚醒スケジュールに合わせて徐々にずらしておき,旅先では可能な限り日光(特に朝の光)を浴びる。短時間作用型の催眠薬や覚醒促進薬(例,モダフィニール)を到着後に短期間使用してもよい。
引用元:概日リズム睡眠障害
特に夜勤を伴う仕事に従事している人は、睡眠覚醒スケジュール障害が発生しやすいと言われています。疲れも溜まりやすい状態となりますので、夜勤明けの過ごし方を工夫して、疲れが「慢性疲労」とならないように気をつけるようにしてください。