体に不調を訴えて、病院で精密な検査をしてみても、肝臓や腎臓をはじめとして、血液検査等でも、体のどこにも異常が見つからない。冷え性や貧血、うつ病といった特徴的な症状も見受けられない。なのに、原因不明の強い疲労感やだるさといった症状を訴える人がいます。これが「慢性疲労症候群」と呼ばれる病気です。
この慢性疲労症候群は、世間一般的に呼ばれている「慢性疲労」とは異なるものです。「慢性疲労」とは疲れが溜まっている状態の事ですが、慢性疲労症候群は完全な病気です。
慢性疲労症候群の症例
慢性疲労症候群と診断されるまでには、様々な症状が現れます。強い疲れを感じたので、何か病気を疑い精密検査を受けたとしても、体に異常は見つかりません。ここで一つ、慢性疲労症候群と診断されるまでの症例を挙げてみます。
Aさん 女性(35歳)の例
仕事も順調で、その働きぶりが評価されて昇進となったAさんは、仕事もさらに多忙をきわめるようになり、そこからくる疲労感が増すようになっていました。
体がだるい感じが朝から晩まで続き、頭痛や微熱もある。風邪に良く似た症状なので、そのうち収まってくるだろうと思い、市販の風邪薬を飲みながらも、仕事は続けました。
しかしその後も、疲れはなかなか取れません。医者に処方してもらった風邪薬を飲んでも一向に収まる気配が無く、もしかすると何か大きな病気かもしれない・・と心配になり、大きな病院で診断を受けることに。しかし、血液検査を含む精密検査を行なっても、どこにも悪いところは発見されませんでした。
体に悪いところは無いというのに、それでも症状は益々悪化してきました。さらに強い疲労感が体を襲い、職場に辿り付くだけでも一苦労。仕事を始める前から、すでに体は疲れきってしまい、仕事がまったく手に付かなくなってしまいます。また、少し動いただけでもすぐに休憩が必要になり、その時間の間隔は日に日に増えていきます。
物忘れも激しくなり、頭で何かを考えるということにも、疲労を感じてしまう。集中力も無くなり、憂鬱な気分が続いて、精神的な症状も強くなってきました。
ついには朝、ベッドから起きることも出来なくなり、会社にも出社できなくなります。ここまで症状が進んでしまう間にも、いくつも病院を周って検査を受けましたが、症状は一向に回復せず。そして、ある病院で心療内科を紹介され、そこで初めて慢性疲労症候群と診断されることになります。
「まだ動けるし働けるから大丈夫」とは思わない
慢性疲労症候群では、このような症例にあるように、ベッドからも起き上がることが出来なくなり、仕事は勿論、普段の生活にも支障をきたしてしまうほどの強い疲労感という症状をもたらします。
そして、この症状は短期間ではなく、半年や1年といった様に、長い期間続くことになります。さらに、症状は繰り返して起こり、完治には専門的な治療が必要となるります。こうなってしまうと、会社を休養するだけの期間では完治せず、退社を余儀なくされるといった事にも繋がってしまいます
この様に、体に今までかんじたことが無いような疲れを感じても、「まだ動けるし、働けるから大丈夫」「きっと慢性疲労だ。休めばいつかはましになる」と思うのは危険なのです。
疲労外来で専門的な治療を受ける
強い疲労感を感じて病院に行ってはみたが、特に悪いところも見つからない。でも、一向に快方に向かわないという方は、心療内科や精神科に最近設けられている「疲労外来」を訪ねてみることをお勧めします。この疲労外来には、慢性疲労症候群を専門的に治療するための設備や専門医が居ます。かかりつけの医者に相談して、疲労外来の紹介を受けるといった事も、少しでも早く症状を完治させる方法のひとつです。