個性なんていらない?平凡が一番疲れない

様々な情報が飛び交い、日々新しいことが生まれてくる現代は、非常に流れの早い時代となっています。何かが生まれては消え、そしてまた生まれてくる。

一時期のブームは過ぎましたが、お笑いブームが最盛期だった頃は、いわゆる「一発屋」的な個性をもつ芸人も沢山出現しました。そして、そんな時代だからこそ、個性的であることが重要視される時代となっています。

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個性的であることを強要されている?

一昔前の話となりますが、文部省が「個性化教育」なるものを打ち出し、学生一人一人に個性や多様性を持たせる教育を推奨する時代がありました。

平成18年版 高等学校教育の個性化・多様化を進めるために

また、現在でも若年層を読者にもつ雑誌や週刊誌、ファッション関係の雑誌などでも、「個性的」であることが「かっこいい」というメッセージが発せられています。

しかし、個性とはわざわざ獲得するものなのでしょうか?自分が本来持っている個性を潰してしまい、誰かに教えてもらった個性を全面に出す。個性とは、この様なものでは無いはずです。

個性とは?

ある個人を特徴づけている性質・性格。その人固有の特性。パーソナリティー。 「強烈な-をもった作品」 「 -を発揮する」

上記はコトバンクから「個性」を調べた結果を引用したものです。文章中にもありますが、個性とは「その人固有の特性」です。自分で意識することなく、すでにあるもの、備わっているものが個性なのです。

誰ひとりとして同じ人がこの世にいないのと同じで、個性も一人にひとつだけです。そう考えると、それだけで全ての人は「個性的」であると言えるのではないでしょうか。

「普通」が個性的に見える人

確かに、他の人とは異なる、ある意味「異質」とも思えるような個性を持っている人はいます。世を賑わしているタレントやスポーツ選手、政治家にいたるまで、話題になるような人は皆「個性的」だなと私達の目にはうつります。

しかし、当の本人たちは、自分が「個性的である」とはあまり考えてないでしょう。その個性を出そうと努力しているわけでもなく、演じているわけでもありません。自然体ではあるのですが、私達からすれば、それが個性的に見えているだけなのです。

もちろん、中には個性を演じている人もいます。しかし、そういった人たちは、自宅に戻って一人になると、ひどく無口になり、休日であっても誰とも会わず、自宅でゴロゴロと一人で過ごすという人が多いと聞きます。これは、「個性」を演じることに疲れてしまっているからです。

個性を求めるのは「平凡な人間」である証拠

では、何故私達は本来持っている個性を捨てて、新たな個性を求めてしまうのでしょうか?それは、発信される様々なメッセージを信じて個性を磨く人こそが凡庸であり、平凡な人間であるということを自分自身で認めているからに他なりません。

若い人達が一生懸命に「個性的」になろうとすればするほど、言葉は悪いのですが「同じような人間」があちこちに溢れかえってしまいます。

同様のファッションセンスをもった人間がたくさんいれば、当然ですがその個性は多勢の中に埋もれてしまうことでしょう。「こうすることで個性的になる」と考えてしまう思考スタイルは、残念なことに「没個性的」な人間を大量生産しているに過ぎないのです。

しかし、こういった「脱・個性」は、程度の差はありますが、誰もが経験することではないでしょうか?そして、それらを経験していく中で、「何か違う」とか、「これでは周りと同じだ」と気づき、そこで改めて自分の個性を模索していくことになります。

試行錯誤しながらも、そういった経験を積んでいくことで、自分本来が持つ個性に目覚めていくわけです。周りの皆と同じことに安心する一方で、やっぱり周りとは違っていたい。その葛藤の中で、いつしか個性のバランスも取れ、「自分らしさ」を手に入れるに至るというわけです。

人とは違った「個性」を手に入れたい。しかし、それは素の自分ではないし、なんだか無理しているように感じる・・・。こういった葛藤を抱えている人は、先ほども触れたように「凡庸で平凡な人間」なのです。

平凡であることが最も自然で疲れない

でも、本来はこの姿こそが正しいのです。平凡であっても、それが人間一人ひとりが持つ「個性」なのです。「自分の個性は平凡だけど、そういえば周りもみんなも普通の人、すなわち「平凡な個性」を持っている人が多いな。」と思うことで、なんともいえない安心感を得ることができます。

しかしながら、強烈な個性を持つ人であれば、周りに同様の「強烈な個性」を持つ人はきっと多くはないでしょう。私達が得ている様な「他と同じであることで得られる安心感」を得ることができないのです。

これは非常に疲れることです。悩みがあっても誰にも話せず、また、自分が「個性的である」と言われることで、「自分は他とは違う人間なのか」と、悩んでしまうこともあるのです。

そう考えると、実は「平凡」であることが一番疲れない個性であるといえるのではないでしょうか。

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