気分障害(躁うつ病)の治療

この記事の所要時間: 748

気分障害(躁うつ病)の治療の目標として、第一に病相からの回復で、第二が再発の予防(防止)となります。症状が軽い場合は「薬物療法」や「認知療法」が適用され、症状がある程度強い場合は薬物療法を中心に治療を行います。

また、うつ病の場合は自殺の防止、躁病の場合は社会的な逸脱行動の防止が最重要であり、入院の適否も含めた治療の形態を考慮することが大変重要となります。

気分障害においては、脳内の神経伝達物質の働きが障害されている疾患であるという側面がありますので、まずはその事実を本人や家族がしっかりと理解することが治療の第一歩となります。

特にうつ病はしばしば病気とは認識されず、「怠けているだけだ」とか「性格が悪いから」等と勘違いされてしまいがちです。

そういった特徴から、家族や周囲の人は「がんばって」「気をしっかり持って」といった具合で励まし、逆に本人の気持ちを追い込んでしまう結果となってしまうことも多いのです。

病は気からという言葉がありますが、「病気は気持ちの問題からきているのではない」という認識をしっかりと持つことが治療のスタートといってもよいでしょう。

この認識を持つことができれば、休養と服薬の必要性も理解できるようになります。そして、病状に応じて仕事を休んだり、軽くしたりといった点にも考慮が払われる必要も出てきます。

また、症状が服薬によって緩和されることへの理解も必要です。薬の効果が出てくるタイミングや副作用についての理解も欠かせません。

上記で説明したような「一般的な理解」が成されなければ、以下で述べる治療を開始することはできないでしょう。

抗うつ薬による薬物療法

種類と効果

抗うつ薬には「三環系抗うつ薬」「四環系抗うつ病」「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」「選択的セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」等があります。

いずれの薬も、うつ病の症状である抑うつ気分や活動性低下を改善し、不眠や食欲不振などの身体症状にも一定の効果を発揮します。

これらの薬は、脳内のシナプス間隙に作用して、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の再取り込みを阻害し、神経伝達の効率を高めるように作用します。

薬の効果は一般的には数週間で現れますが、1~2ヶ月服用しても十分な効果が得られない場合は、他の薬に変更したり、抗不安薬、気分調整薬、抗精神病薬を不可することもあります。

服用期間の目安としては、改善が見られてから1~2ヶ月は同じ量で維持し、以降は少しずつ減量していきます。

抗うつ薬には、以上の病相期の治療とともに、うつ状態の再発を防止する効果もあり、場合によっては長期に渡って抗うつ薬を使用することが必要となります。

抗うつ薬の副作用とその対策

抗うつ薬を服用することで、眠気や体のだるさ、口の渇き、便秘、尿の出が悪くなる、目のかすみや立ちくらみがするといった神経系の副作用が出ることがあります。また、心伝導系への影響がみられたり、痙攣(けいれん)を誘発する場合もあります。

副作用には個人差も大きいのですが、これらの副作用症状の中には、薬の服用を暫く行っているうちに慣れてしまうような場合も見受けられます。

対策としては、薬の量を減らしたり、他の薬に変更するといった対策がとられます。また、現れている副作用を抑える薬を新たに服用する対症療法を適応する場合もあります。

副作用は個人差もあり、症状の程度も様々です。しかし、副作用の軽重にかかわらず、必ず医師に報告することが大切です。

気分調整薬による薬物療法

種類と効果

気分調整薬には、「炭酸リチウム」「バルプロ酸ナトリウム」「カルバマゼピン」などがあります。これらの薬は、躁病相の症状である高揚気分や活動性の亢進を抑えます。

しかし、抑えるといっても急激な鎮静効果ではないので、自覚的には自然におさまっているという感じで改善していきます。

効果は数週間ほどで現れますが、十分な効果が現れない場合は、他の気分調整薬への変更や抗精神病薬の追加などが試みられます。

服用期間は躁状態が治まるまでの数ヶ月間を目安として、以後は再発予防のために服用を継続するかどうかを検討することになります。尚、再発予防の場合は、服薬期間は特に限定されていません。

気分調整薬は血中の濃度を測定しながら使用することが原則です。濃度が有効な範囲にあれば効果が発揮されるのですが、それよりも低い場合は効果も低くなり、逆に高い場合だと中毒症状が出やすくなります。

気分調整薬の副作用とその対策

眠気やだるさ、体のふらつき、手の震え、下痢といった副作用が見られます。また、血中濃度が高くなりすぎると、痙攣や意識障害が発生する危険性が高まります。

服用者が高齢である場合、肝障害や腎障害がある人等は特に注意が必要で、定期的な血液検査を受ける事が重要となります。

認知療法

認知療法は、うつ病の場合に有効な精神療法の一種となります。

うつ病になりやすい人は、元来独特の思い込みを持っている人が多いとされています。例えば、「仕事であっても絶対にミスをしてはいけない」とか、「他人は自分のことをまったく分かってくれない」、「ミスをすると人から嫌われてしまう」といったことで、「心の法則(スキーマ)」と呼ばれています。

うつ状態になると、スキーマを基盤とした悲観的な思考が生まれてきます。そのような思考が悲観的な気分を生み、悲観的な気分が「悲観的思考」を生み出し、完全な悪循環を生じてしまいます。

例えば「元気が無くなって家族が疎遠になってしまった」という思考が抑うつ気分を生み出し、それがさらに発展して「自分なんかどうなってもいい」「生きていても仕方が無い」といった思考に繋がるといった具合です。

認知療法においては、コントロールできない抑うつ気分には一切手をつけず、制御が可能である悲観的思考を対象にします。悲観的な思考が出てきた際に、それとはまったく違う考えがないかと発想するように励まします。

「みんなが疎遠なのは、自分をそっとしておくためだ」といったように、簡単に言えば悲観的思考をポジティブに捉えるように励ますのです。そして、そのような対立する考えが出てきたときに、気分がどのように改善するのかを評価するのです。

このような手続きを通して、次第に気分の改善をはかり、思考様式を変えていこうという試みが認知療法なのですが、このような治療はうつ病相の真っ最中においては、なかなか進展しにくいというのが現状です。

しかし、回復期や回復後には効果を発揮し、行動パターンを変えたり、再発予防に繋がるといった効果を見せます。

電撃けいれん療法(電気ショック療法)

この治療法は、うつ病、躁病ともに効果的とされ、電気ショック療法とも呼ばれている治療法です。100ボルトの電流を数秒間頭部に通電し、人工的に痙攣(けいれん)を起こして症状を回復を試みます。

最近では安全のために、麻酔科医の管理のもとで筋弛緩(きんしかん)薬を使った無けいれん療法が主力となっています。

適応は薬物療法の効果が薄い場合、副作用によって薬が利用できない場合、自殺の恐れが強かったり、早急な改善を本人が望む場合です。通常は5回程度の施工で効果が見られます。

高照度光照射療法

季節性うつ病の場合に適応される治療法で、1日2時間程度、2500~3000ルクスの光を本人に対して照射します。通常は早朝に施工し、治療開始から数日~数週間で効果がみられます。

しかし、照射をやめてしまうと症状がぶり返してしまうので、病相が終了するまで継続する必要があります。

断眠療法

難治性のうつ病の治療法として適応されます。入院治療で行われ、徹夜ないしそれに近い状態を数日間続けることで、症状の改善をはかります。回復は比較的早期にあらわれます。

自殺の予防

うつ病は自殺の恐れが強い病気で、何をおいてもその予防が最も重要とされます。

自殺が多い時期があり、一つは病気になり始めた時期、二つ目は回復期です。抑うつ気分が強く出る時期には自殺に至ることは少ないとされています。なぜなら、その時期は活動力も非常に低下することから、自殺を行う元気もない状態となるためです。

自殺の予防には、まず危険性がどの程度強いのかを予測する必要があります。しかし、その程度をはかる尺度はないので、本人の訴えの深刻さや過去に未遂があったか、家族の中に自殺者や未遂者がいたかどうか、生活の孤独さなどを基準として、総合的に判断します。

自殺の可能性が高いと思われる場合は、積極的に話題として取り上げ、本人と話し合うこと。周りは本気で心配しているということを伝えること。そして、自殺を絶対にしないという約束をし、家族が目を離さないように注意することが重要です。

他にも、自殺に繋がるような薬や農薬、刃物といった危険物や手段から遠ざけることも大切です。

入院治療

気分障害は通院治療で軽快させることができる病気なのですが、中には入院治療を要する場合もあります。

  • うつ病相では自殺の恐れがある
  • 自宅ではゆっくりと休養をとれない
  • 家族が病人を励まして追い込んでしまう
  • 躁病相では社会的な逸脱行為が制御できない
  • 薬物療法の管理を厳重にする必要がある(高齢者の場合など)

上記に当てはまる場合においては、通院のみで治療することは難しいと考えられます。

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